👵後期高齢者医療制度とは?〜75歳からの独立した医療保険〜
「後期高齢者医療制度」は、75歳以上の方を対象とした独立した医療保険制度です。従来の老人保健制度に代わり、2008年(平成20年)4月に創設されました。
📌制度の目的と運営主体
この制度は、高齢者の心身の特性や生活実態を踏まえ、高齢者の医療を**国民全体の支え合い**で賄うことを目的としています。
事務手続き
保険料の徴収や各種届け出の受付などは、お住まいの**市区町村**の窓口で行われます。
🙋♀️制度を受けられる方(被保険者)
後期高齢者医療制度に加入する**被保険者**は、主に以下の2つのケースです。
1. 75歳以上の方:75歳の誕生日当日から、すべての方が自動的に加入します。それまで加入していた健康保険(国民健康保険、会社の健康保険など)から切り替わります。
2. 65歳以上74歳以下の方:寝たきりなど一定の障害があると広域連合から認定を受けた方で、ご本人の申請により加入できます。
💰医療費の自己負担割合と財源
病院などの窓口で支払う**自己負担割合**は、所得に応じて定められています。
| 所得区分 | 自己負担割合 | 概要 |
| 一般・低所得者 | 1割 | 所得に応じて負担軽減措置もあります。 |
| 一定以上の所得がある方 | 2割 | 2022年10月から、現役並み所得者に準ずる一定以上の所得がある方の窓口負担割合が引き上げられました。 |
| 現役並み所得者 | 3割 | 現役世代並みの所得がある方です。 |
医療費全体の財源は、患者負担を除き、「公費(税金)」が約5割、「現役世代からの支援金」が約4割、「被保険者の方の保険料」が約1割で賄われています。高齢化の進行に伴い、現役世代の負担が増加しているのが現状です。
📈日本の後期高齢者を取り巻く深刻な問題と解決策
日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでおり、特に75歳以上の後期高齢者が急速に増加しています。
いわゆる2025年問題。
これは、制度の持続可能性と高齢者自身の生活に大きな影響を与えています。
🚨主な問題点
現役世代の負担増に対する不満
高齢者医療の費用を主に現役世代からの支援金で賄う仕組みに対して、「世代間の公平性」をめぐる議論や、現役世代の**納得感**を得ることが難しいという課題があります。
医療・介護人材の不足
高齢者が増える一方で、彼らを支える医療従事者や介護人材の確保が追い付かず、サービスの質の維持が困難になっています。
高齢者自身の経済的不安と受診抑制
医療費の窓口負担割合の引き上げや保険料の負担増は、低所得の高齢者の受診抑制を招き、健康状態の悪化につながる懸念があります。
「後期高齢者」という名称への抵抗感
制度の名称が、高齢者に対する差別的なイメージを与えるという批判があります。
✨解決に向けた主な取り組みと今後の課題
これらの問題に対し、国はさまざまな解決策を模索し、実行に移しています。
| 施策の方向性 | 具体的な解決策 | 今後の課題 |
| 制度の持続可能性の強化 | 負担能力に応じた負担の徹底:一定所得以上の後期高齢者の窓口負担割合を2割へ引き上げ。医療費の適正化:入院日数の適正化や後発医薬品(ジェネリック)の利用促進。 | 世代間公平と高齢者の受診機会確保の両立。低所得者への配慮の継続。 |
| 地域での支え合いの強化 | 地域包括ケアシステムの推進:医療・介護・住まい・生活支援を一体的に提供し、住み慣れた地域での生活を可能にする。予防医療の強化。 | 地域ごとの医療・介護資源の偏在の解消。サービス提供の担い手(人)の確保。 |
| 高齢者の活躍推進 | 「生涯現役社会」の構築:意欲ある高齢者の就労機会を確保し、社会の担い手として活躍してもらう。健康寿命の延伸。 | 高齢者の健康状態や体力差への配慮。高齢者が働きやすい環境整備。 |
| テクノロジーの活用 | ICT技術の積極的導入による医療・介護サービスの効率化。AIなどを活用した診断・ケアの質の向上。 | 医療・介護分野でのデジタル人材の育成と、高齢者のデジタルデバイド(情報格差)の解消。 |
後期高齢者医療制度は、「高齢者を社会全体で支える」という理念に基づいた制度ですが、人口構造の変化に伴い、その仕組みは常に見直しを迫られています。私たち一人ひとりがこの制度の現状と課題を理解し、「健康寿命を延ばす」ことや「世代を超えて支え合う」意識を持つことが、より良い社会の実現に向けた第一歩となります。
